1. はじめに#
本記事では Dify の Langfuse プラグインをご紹介いたします。
Dify でアプリを開発する際、ワークフローに直接プロンプトを書き込んでいくと、「前のプロンプトの方が良かったけど消しちゃった」「チームで同じプロンプトをスムーズに共有したいけど…」といったお悩みが出てきませんか?
Dify 上でプロンプトが増えてくると、バージョン管理や再利用が難しくなりがちです。これが開発効率やアプリケーションの品質に響いてしまうことも。もし、プロンプトを Dify のワークフローから切り離し、専用のツールで一元的に、かつバージョン管理しながら集中的に扱えたら、こうした課題はずいぶん楽になるはずです。
そこで注目したいのが、LLM アプリケーションのトレーシングやプロンプト管理に特化したオープンソースツール「Langfuse」です。
実は、皆さんがお使いの Dify は、既に Langfuse の非常に強力な「トレース機能」との連携を標準でサポートしています!

Langfuse はトレース機能だけでなくプロンプトのバージョン管理、変更履歴の追跡を効率的に行う機能もあります。しかし、Langfuse でプロンプトをしっかり管理していても、それを Dify のような LLM アプリケーション開発プラットフォームで利用するには、ひと手間必要でした。
そこで今回、この課題を解決するために、Dify から Langfuse で管理されているプロンプトを直接利用したり検索したりできるカスタムプラグインを開発し、OSS として GitHub で公開しました。
▶ 本プラグインの GitHub リポジトリはこちら
このプラグインを使えば、Langfuse で厳密にバージョン管理されたプロンプトを、Dify のワークフローに簡単に組み込むことができます。
この記事では、私たちが開発したこの Dify 向け Langfuse プラグインが、どのように皆様のプロンプト管理を効率化し、アプリケーション開発をサポートできるのか、その機能や使い方をご紹介します。具体的には、「特定のプロンプトを取得するツール(Get Prompt)」と「プロンプトを検索するツール(Search Prompts)」、「プロンプトを更新するツール(Update Prompt)」の3つの主要な機能について解説していきます。
プロンプト管理に課題を感じている方、そして Langfuse の強力な管理機能を Dify で活かしたいと考えている方に、この記事がお役に立てれば幸いです。
2. 背景#
このプラグインがどのような課題を解決し、どんなメリットをもたらすのかをご理解いただくために、まずは Dify と Langfuse、そしてそれらを連携させる価値について簡単にご説明します。
Dify とは#
Dify は、ノーコードまたはローコードで LLM を活用したアプリケーションを迅速に構築できるプラットフォームです。直感的な GUI を通じて、複雑なワークフローも比較的簡単に作成できるのが大きな魅力です。
Langfuse とは#
次に Langfuse ですが、これはLLMアプリケーションの「オブザーバビリティ(可観測性)」を高めるための強力なオープンソースツールです。Langfuse の主な機能としては、アプリケーションの実行フローを詳細にトレース(追跡)してデバッグを容易にしたり、消費トークン数を管理したり、ユーザーの利用状況に関するデータを収集・分析して改善に繋げたりといったものが挙げられます。これにより、LLM アプリケーションが実際にどのように動作しているのか、どこに問題があるのかを把握しやすくなります。
しかし、Langfuse の魅力はそれだけではありません。今回私たちが特に注目しているのは、Langfuse が提供する「プロンプト管理機能」です。 Langfuse を使えば、作成したプロンプトをバージョンごとに記録し、変更履歴を管理し、さらには異なるバージョンのプロンプトを比較・評価することも可能です。これにより、プロンプトを単なるテキストではなく、適切に管理・改善していくべき「資産」として扱えるようになります。
Dify × Langfuse 連携の価値#
Dify の手軽なアプリケーション構築能力と、Langfuse の堅牢な LLM 運用機能を組み合わせることで、開発プロセス全体に以下のような戦略的な価値がもたらされます。
- プロンプト開発の独立性と迅速性の向上: プロンプトのライフサイクルを Dify のワークフローから分離し、Langfuse で一元管理することで、プロンプトの修正や実験がアプリケーション本体の変更・再デプロイを必要としません。これにより、迅速なイテレーションと改善が実現します。
- プロンプト品質と再利用性の一貫した担保: Langfuse による厳密なバージョン管理は、過去の優れたプロンプトへの確実なロールバックを可能にし、チーム内やプロジェクト間でのプロンプト共有と再利用を効率化し、アプリケーション全体の品質維持に貢献します。
- データ駆動型プロンプトエンジニアリングの推進: Langfuse のトレース機能や評価基盤と連携することで、各プロンプトのパフォーマンスを客観的に把握しやすくなります。これにより、データに基づいた継続的な改善サイクルを構築し、プロンプトの最適化を促進できます。
このように、Dify と Langfuse の連携は、単にツールを繋ぐだけでなく、LLM アプリケーション開発の質と効率を一段階引き上げるポテンシャルを秘めているのです。本プラグインは、その連携を具体的に実現するための一助となります。
3. Langfuse プラグインの概要#
Langfuse プラグインは Dify におけるプロンプト管理を、Langfuse と連携して効率化するために開発されました。Difyのワークフローから Langfuse 上のプロンプトを手軽に扱えるようにすることが主な目的です。
プラグインは、主に以下の3つのツールで構成されています。これらのツールの詳細については、GitHub の README-ja をご覧ください。
- Get Prompt ツール: Langfuse から特定のプロンプト(本文やメタデータ)を取得します。
- Search Prompts ツール: Langfuse 内のプロンプトを様々な条件で検索します。
- Update Prompts ツール: Langfuse の特定のプロンプトを新しいバージョンとして更新します。
なお、本プラグインを通じて Langfuse の機能を利用するためには、Langfuse の API キーが必須となります。 API キーの取得方法や Dify への具体的な設定手順については、次のセクションでご説明します。
4. 導入方法と使い方#
このセクションでは、開発した Langfuse プラグインを Dify に導入し、実際にワークフローで活用するための手順と基本的な使い方についてご説明します。
このプラグインはオープンソースソフトウェアとして、以下の GitHub リポジトリで公開されています。
🚀 Dify-Langfuse連携プラグイン GitHubリポジトリ 🚀
https://github.com/gao-ai-com/dify-plugin-langfuse
準備: Langfuse でプロンプトの作成#
Langfuse でプロンプトを作成する手順は公式ドキュメント をご覧ください。
プラグインのインストール#
本プラグインは、Dify のプラットフォーム機能を利用して、GitHub リポジトリから直接インストールすることができます。
- Dify のプラグイン管理ページへ移動: Dify にログイン後、画面右上にある[プラグイン]からプラグイン管理ページを開き、[プラグインをインストールする]、[GitHub]を続けてクリックします。
- リポジトリアドレスの入力: インストールするプラグインの GitHub リポジトリアドレスを入力するフィールドが表示されますので、ここに、https://github.com/gao-ai-com/dify-plugin-langfuse を入力します。
- バージョンとパッケージファイルの選択・インストール: リポジトリが認識されると、利用可能なバージョン番号とパッケージを選択する画面に進みます。適切なものを選択し、指示に従ってインストールを完了してください。
必要な設定:Langfuse APIキーとエンドポイント#
プラグインをインストール後、Langfuse と連携するためにはLangfuse API キーとエンドポイントを設定する必要があります。
- Langfuse の [Settings] から [API Keys] で API キーを発行します。


基本的な使い方#
このLangfuse連携プラグインのツールをDifyのワークフローに組み込むことで、プロンプトの検索、取得、更新をシームレスに行うことができます。以下に基本的な利用フローの例を示します。
Search Prompts ツールで目的のプロンプトを探す
特定のプロンプト名が不明な場合や、条件に合うプロンプトのリストから選びたい場合にこのツールを使用します。
- ツールから Langfuse プラグインの Search prompts ツールを選択します。
- 入力パラメータを設定します。例えば、「customer_support_faq というラベルがついた最新のプロンプト」を探したい場合は、label フィールドに customer_support_faq を入力します。
- このツールを実行すると、条件に一致するプロンプトのメタデータ(プロンプト名、バージョン情報など)がリスト形式で出力されます。
Get Prompt ツールでプロンプト本文を取得
実際に使用するプロンプトの本文を取得します。
- ツールから Langfuse プラグインの Get Prompt ツールを選択します。
- 取得するプロンプトの入力パラメータを設定します。
- このツールを実行すると、指定されたプロンプトの本文が text 出力として、メタデータが json 出力として得られます。
LLMノードで取得したプロンプトを利用
Get Prompt ツールで取得したプロンプト本文を、LLM ノードで使用します。
- LLM ノードを追加または選択します。
- LLM ノードのプロンプト入力設定部分(例: システムプロンプトやユーザープロンプトのフィールド)に、Get Prompt ツールの出力を参照する変数を挿入します。

特定のプロンプト本文を更新します。
- ツールから Langfuse プラグインの Update prompt ツールを選択します。
- 更新するプロンプトの入力パラメータを設定します。
- このツールを実行すると、Langfuse に新しいプロンプトバージョンが作成され、指定したラベルやタグが設定されます。
※Get Prompt ツールと併用する際にはタグの設定間違えのないよう注意してください。
これで、Langfuse で管理されたプロンプトを Dify のワークフロー内で動的に利用する基本的な流れが完成です。これにより、プロンプトの変更を Langfuse 側で行うだけで、Dify のワークフローは変更せずに最新のプロンプトを適用できるようになります。
5. 活用シナリオ#
この Langfuse 連携プラグイン、特に Get Prompt ツールをDifyのワークフローに組み込むことで、皆さんのアプリケーション開発はより効率的で、柔軟になります。いくつかの具体的な活用シナリオを見ていきましょう。
シナリオ1:安全かつ迅速なプロンプトの改善サイクル#
Dify で運用中のプロンプトを改善したいけれど、直接編集はリスクがあり、ワークフロー複製も手間になります。
このプラグインがあれば: Get Prompt ツールで取得取得したプロンプトを元に改善案を練り、その新しいプロンプトテキストを Update Prompt ツールを使って Langfuse の該当プロンプトの新しいバージョンとして登録します。その際、例えば staging や developer-test-v2 といったラベルを新しいバージョンに付与します。 その後、Dify のテスト用ワークフローで改めて Get Prompt ツールを使い、その新しいラベルを指定して改善版プロンプトを読み込み、効果を検証します。期待通りの結果が得られれば、Langfuse 側でそのバージョンに production ラベルを付け替えるか、あるいは本番用ワークフローが参照するラベルを更新します。 これにより、Dify 上で直接プロンプトを編集・テストし、その成果を即座に Langfuse のバージョン管理下に置き、安全に本番環境へ反映するという、よりダイレクトで迅速な改善サイクルが実現します。問題発生時のロールバックも Langfuse のバージョン履歴から容易に行えます。
シナリオ2:A/Bテストによる最適なプロンプトの追求#
複数のプロンプト案の効果を Dify で比較したいけれど、準備が大変だと感じていませんか。
このプラグインがあれば: 比較したい複数のプロンプト案を Dify 上で作成し、それぞれを Update Prompt ツールを使って Langfuse の同じプロンプト名に対して異なるラベル(例: test-A, test-B)を付与した新しいバージョンとして登録します。 その後、Dify 側で Get Prompt ツールを使い、リクエストに応じて呼び出す label を動的に切り替えて A/Bテストを実施します。それぞれの結果の品質を Langfuse のトレース機能やスコアリング機能(Langfuse 本体の機能)と組み合わせて分析すれば、実際の利用データに基づき最適なプロンプトを選定できます。 Dify の柔軟性と Langfuse の管理・評価機能を活かし、データドリブンなプロンプト改善が可能です。
シナリオ3:チームでの効率的なプロンプト共同開発・運用#
チームでの Dify 開発時、プロンプト管理が属人化したり、最新版の共有が難しかったりしませんか。
このプラグインがあれば: Langfuse をチーム共通の「プロンプトリポジトリ」として活用します。プロンプトエンジニアが Langfuse でプロンプトのベースラインを作成・管理する一方で、Dify を利用する各開発メンバーも、日々の開発やテストの中で改善したプロンプトや新しいアイデアを Update Prompt ツールを使い、自身の名前やタスクID を含む一時的なラベルを付けて Langfuse に新しいバージョンとして気軽に登録・共有できます。 これにより、個々の改善案が埋もれることなく Langfuse に集約され、チームレビューを経て正式なバージョンやラベル(例: stable, beta)に昇格させることが可能になります。Search Prompts ツールでこれらの試行錯誤中のプロンプトも検索・発見できるため、チーム全体の知見共有と開発効率が大幅に向上します。
これらのシナリオはほんの一例です。皆さんのアイデア次第で、このプラグインは Dify での LLM アプリケーション開発をさらに強力にサポートしてくれるはずです。
6. 制限事項と今後の展望#
この Dify 向け Langfuse 連携プラグインをより快適にご利用いただくために、現時点での主な制限事項と、今後の機能拡張に関するアイデアについて触れておきます。
現時点での主な制限事項#
本プラグインをご利用いただくにあたり、いくつかの制限事項がございます。主な点として、Get Prompt ツールと Update Prompt ツールは現状、Langfuse 上で text タイプとして保存されているプロンプトのみに対応しており、chat タイプは対象外です。また、Get Prompt ツールでラベルとバージョン番号の同時指定はできません。これは Langfuse API の仕様によるものです。
今後の展望に関するアイデア#
このプラグインをさらに便利にするためのアイデアとして、以下のような機能拡張が考えられます。これらは現時点での構想であり、将来的な実現をお約束するものではありませんが、可能性としてご紹介します。
- カスタムトレースを定義できるオリジナル LLM ノードの作成 Langfuse へのトレース情報をより詳細かつ柔軟に送信できる、このプラグイン専用のLLM 実行ノードがあれば、Dify のワークフロー内での処理と Langfuse 上のトレースデータとの連携を一層深め、より高度な分析やデバッグに役立つかもしれません。
- chat タイプのプロンプトへの対応 Get Prompt ツールが chat タイプのプロンプトにも対応するようになれば、Langfuse で管理できるプロンプトの形式が広がり、より多様な LLM アプリケーションの構築に貢献できる可能性があります。
- Langfuse データセットとの連携 Langfuse のデータセット機能を Dify から活用できるようになれば、例えば、Langfuse に登録された評価用データセットを Dify から参照し、異なるプロンプトバージョンでの出力をバッチテストするようなワークフローを構築するなど、プロンプトの品質評価や改善サイクルをさらに効率化できるかもしれません。
7. まとめ#
本記事では、Dify と Langfuse を連携させ、プロンプト管理を格段に向上させるカスタムプラグインをご紹介しました。このプラグインを利用することで、皆さんが普段お使いのDify の手軽なアプリケーション開発フローはそのままに、Langfuse が持つ堅牢なプロンプトのバージョン管理やトレーサビリティといった強力な機能の恩恵を受けることができます。これにより、プロンプト管理の煩雑さから解放され、品質向上、開発サイクルの迅速化、そしてチームでの効率的な共同作業が期待できます。
Dify での開発効率をさらに高めたい、あるいはプロンプト管理を本格的に導入したいとお考えの Dify ユーザーの皆様にとって、本プラグインはきっとお役に立てるはずです。
このプラグインはオープンソースソフトウェアとして GitHub で公開しています。ぜひ一度お試しいただき、その効果を実感していただければと思います。
実際にプラグインを使ってみたご感想、改善点のご提案、バグのご報告、さらには機能追加に関するプルリクエストなど、皆様からの積極的なフィードバックやコントリビューションを心より歓迎いたします。コミュニティと共に、このプラグインをより実践的で強力なツールへと育てていければ幸いです。
この記事が、皆さんの Dify と Langfuse を活用したLLMアプリケーション開発の一助となることを願っています。